昔見た夢

11 5月

 10年ぐらい前に見た夢の話です。
最初の場面は,近未来が舞台でした。しかし住まいは日本家屋です。その世界には,二種のモンスターがいて,どちらも会えば死ぬと言われていました。ただその片方は見たことがありました。死にそうになったやつが担架で運ばれて行くのを見たことがありました。しかし,もう一種類の方は見たという話はなく,ただそれが確実にいることが分かっているだけでした。ただ,生活は普通に営まれていました。隣のうちの家族が私のうちに遊びに来て,私はその家の子供と一緒に遊んでいました。私はまだ両親と一緒に暮らしているようでした。

場面が切りかわって,数年の時間が経ったようでした。街は破壊されていて,コンクリートの瓦礫が積み重なっています。私は瓦礫の中を歩いています。歩いていると,丸い円盤のようなものがありました。それは上部に砲塔があって,4本の足が生えていました。足の先にはタイヤが付いていて,瓦礫の中をパトロールをしているようでした。大きさはそれほどでもなく,直系が1mぐらいです。それは近くに人を感知すると,砲塔をぐるりと回してそちらに向けます。カメラの映像から,人のIDを調べて認識できなければ攻撃してきます。私にも,砲塔を向けてきましたが,確認できたのか通り過ぎて行きました。瓦礫を通り抜けると,アーケード街でした。そこは荒れた様子はありませんでした。少しアーケードを進んだところに店がありました。売っているものは透明なナイロン袋に入った人間でした。中は何か液体で満たされていて,袋の中の人間は生きていました。髪は長く伸びて,他の体毛も長くなっている人が,裸で袋にくるまれていました。不憫に思えて,店番のおばあさんにかわいそうだと言ったのですが,おばあさんは何を言っているのか分からないという表情をしました。

アーケードをもっと奥に行ったら,銭湯がありました。木造で高層の建物でした。風呂に入ろうと思って中に入り,階段で2階に上がりました。服を脱いで浴室に入ると部屋の中程に大きな湯船がありました。湯船に歩み寄ってちょうどお湯につかろうとしたとき,ある男が,ホースを持って浴室に入ってきました。彼を一目見て怪しさを感じたのですが,案の上この男は持っていたホースで,浴室にいた人々に冷たい水をかけ始めました。私はいち早く逃げ出しました。ただ,どの階に逃げてもこの男が追ってきます。階段を上がったり下がったりして逃げたのですが,どこに逃げてもこの男に見られている気がしました。追い詰められて,逃げ場がなくなり,ついに水をかけられそうになったとき,急に視界が開けて,それまでのように見られているのではなく,この銭湯のすべての階が透き通って透明になったかのように,すべてが見通せました。もう逃げる必要もありませんでした。

ここで,場面が変わって,海辺の風景となりました。護岸工事をされた海岸です。自分が赤ん坊の頃の話でした。親父が赤ん坊の私を抱えて海に近いところを歩いていました。歩く先には母親が立っていました。親父は母親の方に歩いて行きます。ゆっくりと歩み寄って,私を手渡そうとして,そこで夢が終わりました。

自分が護岸工事された海岸に立っている写真は見たことがありますが,それは小学1年生のころのものです。夢にあった状況は実際にはないと思いますし,記憶にもありません。ただ,いつも感じることですが,夢にはあまりにもすべてが揃っています。テレビを眺めるのとは違って,自分を包み込む情景があります。はっきりとした夢はまるで経験したかのように感じます。この夢の中で,私の視線は赤ん坊の私の外に在って,また親父の視線でもありました。自分がまだ小さくて,確かに親に育てられて一緒に時間を過ごし,たぶん親父は,子供の私を眺めながら,きっと親父自身のことを考えていただろうと,夢から覚めた後で考えました。