最近読んだ本(自死の日本史、老子)

11 8月

IMG_1686最近『自死の日本史』という本を読みました。三島由紀夫のことが最後の方に書かれていて、それで購入しました。

 古いところは、海の怒りを静めるために犠牲となったオトタチバナヒメの話から始まって、埴輪以前の殉死の話、次に武士の切腹のことがでてきて、江戸では赤穂浪士仇討ち、明治以降は乃木大将の殉死、神風特別攻撃隊と続いて、最後は芥川龍之介、太宰治、三島由紀夫と小説家の自死を取り上げます。

 武士の倫理は切腹によって支えられ鍛えられていたという見解が印象に残りました。自らの行動に常に死が織り込み済みの倫理。赤穂浪士が仇をとって泉岳寺に引き上げるとき、その途中で吉良とつながりのある上杉家の攻撃を受けても不思議ではなかったが、そうした仇討ちの連鎖とはならなかった。それは、彼らがすでに自らの死を受け入れていることを皆が承知していたからだと推測しています。自らの正しさを示すために死ぬことが要求される。それがサムライという言葉の意味だという見解です。

 三島由紀夫の死に方は、狂信的ではあるが悪意はないと述べられています。あの事件に於いて犠牲になったのは、三島由紀夫と、他には行動を共にした森田だけです。そこから、相手を殺し自分も自決する戦前のテロリズムよりもさらに自己に厳しく、襲撃したもののみが犠牲となるように取りはからっていると看取します。三島は小説家であるから、最後に自分が死ぬ物語を書いたと記していますが、それからすると確かに、行動したもののみが死んだことも筋書き通りだったのかもしれません。

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再読なのですが、『老子』を読みました。上編の最初の章が印象的です。

…. 故に、「常に欲無きもの、以て其の妙を観、常に欲有るもの、以て其の徼を観る」。

いつも注意しなければならないことだと思います。

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